week 8 (Cornwall)

旅より面白いものなんて、この世にない。

週最後の授業が終わった金曜13時、急いで寮に帰って授業前にパッキングしておいた荷物の最終確認、14:02にCheltenham Spa駅を発つ電車に乗らなきゃいけないから、あまり時間はない。バッグから教科書を取り出して、交換に歯ブラシとNiveaのチューブクリームを入れる。Alright,よし行くか。

今回向かうはCornwall、見ての通りイギリスの西の果てにある街。Cheltenhamからは2度の乗り換えを含めて列車で約6時間強。まあまあな長旅。目的はFalmouth UniversityのMarine Photography CourseのOpen Day。平たくいうと、オープンキャンパスだ。Screen Shot 2018-11-18 at 20.12.31.png

どこへ行くにもバスが比較的割安なこともあって、実はこの街の鉄道駅は今まで使ったことがなく、Google Mapを見ながら歩いて向かった。

今週は結構忙しくてなかなか睡眠も取れなかった上に、日曜日が提出期限のエッセイもまだ終わっていなかったので、電車内ではまず一眠りして、そのあとしっかりエッセイを書き上げようと計画して列車に飛び乗った。

結果、見事に満員。

日本の新幹線のような構造をしているイギリスの長距離列車の連絡通路では、そのまま日本の新幹線が満員のとき見られるように、男女数人がへたり込んだり、壁に寄りかかって立っていた。

うわーマジかよ。

現実が自分の思い描いていたものを裏切ったとき、落胆すると同時に、自分が旅に戻ってきたことを実感する。それはまるでハゲタカが小動物を攫うように、旅が自分を鷲掴みにして、知らない遠くの街へと連れて行くような感覚。旅に出たのは自分だけど、出たらもう、無抵抗のまま空を飛ぶしかない。

不運にもトイレが設置されている連絡通路から列車に乗り込んでしまった俺は、最初の乗り換えまでの約3時間、誰かが用を足そうとトイレのドアを開けるたびに漂ってくる鼻をつく悪臭に顔をしかめながら、課題のエッセイを書いたり、ラジオを聞いたりしていた。

ちょうど聞いていたラジオで写真家のChris Burkardが言っていた。

”Anything that is worth pursuing is going to require us to suffer”

価値のあるものを獲得するには、必ず苦しまなければならない。

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列車に反射した影が、旅のキツさを語る

2度の乗り換えを経て目的地へ辿り着くころには、辺りは真っ暗に、乗客も自分のみになっていた。そりゃそうだ。だってこの先にもう駅はないんだから(笑)。

無人駅で列車を降り、向かったのは事前にCouchsurfingで連絡を取っておいたMaxの家。今夜の寝床だ。

ちなみに彼とは事前に会ったこともない、話したこともない。

知らない人のために説明しておくと、Couchsurfing(カウチサーフィン)とは、旅人のためのアプリ、ネットワークです。土地の名前を検索すると、そこに住んでいて、ベッドが余っていたり、ソファーになら泊まっていいよって人を見つけられる、完全無料のサービスです。僕は結構使っていて、日本では1o組以上の旅人を泊めて、旅人としての利用は今回が3回目です。

知らされた住所を頼りに、おそらくそうだろうと思われる建物の前まで来たもののイマイチ確証が持てずにいると、偶然隣の家に住む住人が帰って来た。

「ここにMaxってやつ住んでる?」「うん!ここMaxの家よ!」「ありがとう!」

インターホンがないのでドアをノックすると、すぐドアは開き、目の前には想像していたより幾分小柄な男(多分俺と同じくらい)が立っていた。

「ようこそタイガ、紅茶を入れるよ。上がって。今ちょうど一緒に住んでる友達が帰ってきたから紹介するよ、彼がHairry。」お互い自己紹介を済ませて、家(なんと築500年!)を紹介してもらった後、始まったのは旅の話。

事前にプロフィールで読んで少し知ってはいたんだけど、これが凄かった。MaxとHairryは大学を卒業した後やりたい仕事も将来の目標もなくて、とにかくまずは世界を見ようと決めて、2人でヨットで旅に出たらしい。

Cornwallから出航してフランスの港に渡った後、ヨーロッパやアフリカの港町を周遊。

Hairryは途中ポルトガルで恋に落ちで船を去って、Maxは一人で旅を続けた。

サーフボードとギターを船に乗せて、未知の波と港を求めて旅をした話は、今まで読んだどんな旅の話よりも刺激的で、彼らのから滲み出る優しさと強さは、きっとこの旅が彼らに授けたものなのだろうと感じた。

ちなみに彼らの旅は沢山のヨット雑誌や旅行誌に記事化されている。

11時前、海近くにいつも行ってるバーがあるから行かないかと誘われ、二つ返事で快諾。

外へ出ると、自転車に乗ったHairryがサドルを指差す。「行くぞー」

え?まじ?ここめっちゃ坂急だよ?ヘルメットは?つか降ってすぐ下ハイウェイじゃん。そもそも荷台のあるママチャリならまだしも、これ結構ガチのチャリじゃん?

たまに頭と心は喧嘩をするから厄介だ。恐えええええええええええええ!けど知らねえ!もうどうにでもなれ!

こうして頭で計算した恐怖を無理やり押し殺して心に従った結果得られた経験は、想像を遥かに上回る美しさだった。

漕がずとも勝手に降っていくというのに笑いながらペダルを漕ぐイかれたHairryと、必死に捕まる俺、隣で自転車を漕ぎつつ爆笑しながら動画を撮るMax。気づいた、俺試されてたな(笑)。

自転車はスピードをあげ夜のハイウェイを走り抜けていく。目下には、月明かりに照らされた無限に広がる海。港には沢山のボートやヨットが停泊している。頭上には満点に広がる星空。

潮の匂いがする、魚の、タバコの匂いがする。深く息を吸い込んでその空気を肺に満たすと、胸が熱くなった。俺は今確かに生きている。

カウンターのみの、小さな、今まで見た中で一番小さなバーで、今までで一番美味い酒を飲んで(ちなみにMaxが全て奢ってくれた)バーに来ていた彼らの友達と自転車を3人乗りしたりしてふざけ倒したのち、家路に着いた。

帰り際Hairryが静かに呟いた「タイガさ、行きはチャリの2人乗りにビビってたけど、3人乗りを経験した後は全然怖くなかったでしょ?一度Comfort Zone(安全地帯)を出て色々やってみると、なんでも大したことなく感じるんだよ」という言葉は、今も心に刻まれている。

早朝に家を出るため明日はもう会えないことを彼らに伝えて別れの挨拶を済ませ、コロンビアの友達に電話をし、ソファーの上で深い眠りについた。

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Hairry(左)とMax(右奥)とMaxの彼女

太陽が昇る前に家を出た。オープンキャンパスは9:30から昼まで、14時の列車で帰らなきゃいけないことを考えると時間はなかったので、早起きして海岸線を歩いた。

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Falmouthの海

それにしても、この街の人はすれ違うとみんな笑顔で挨拶してくれる。まだ大学チェックしてないけど、もうここに住みたいと思い始めていた。

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老人と海

肝心の大学見学を無事終えて(印象はすごく良かった)駅まで向かうと、猛烈な空腹感に襲われた。そういえば昨日の昼から何も食べてない。大学キャンパス間のシャトルバスで少し話した学生に教えてもらった、イギリスで一番美味いというfish & chips屋に入って、写真を撮るのも忘れて貪り食った。めちゃくちゃ美味かったけど、それが空腹のお陰かどうかはもう分からない。

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港町

電車の時間まで約1時間、疲れ果てていたのもあって、適当なカフェにでも入って時間を潰そうかと思ったけど、帰りの電車で休めばいいと自分に言い聞かせて、しばしハイキング。

辿り着いた小高い丘の頂上からは街全体と海が見渡せて、俺をここに導いてくれた様々な出会いに感謝してまた戻ってこれるように祈った。無神論者なので、一体自分が何に祈ったのかは分からないが。

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最後にやっと晴れた

約18時間の滞在だったけど、本当にこの街が好きになった。

帰りは一瞬だった。列車に乗ってすぐ眠りに落ちて、2度の乗り換え以外記憶がない。

大好きなライターのホーボージュンの兄貴も言ってた。旅に出たら違う人間になって帰ってくる。じゃなきゃ旅に出る意味なんてない。俺もずっとそう思ってる。1日ぶりにCheltenhamに帰ってきたとき、この街が前と少し違って見えた。きっとMaxが、Hairryが、頼んだら笑顔で写真を撮らせてくえたおじいさんたちが、バーのマスターのお姉さんが、自分を少し成長させてくれたのだと思う。

やっぱり旅より面白いものなんて、この世にない。

Maxの旅の動画

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