モロッコ旅行記①【2月20日〜2月21日】

【2月20日】

ベッドから枕と掛け布団を取り去り、ピンと張ったシーツの上に、
有象無象のアイテムをぶちまける。第1次荷物オーデションのスタート。
それはそのまま、旅の始まり。
今回の目的地はモロッコ、日本から送ってもらった地球の歩き方を読みながら道具を仕分ける。
ニット帽とダウンジャケットは一発不合格、ごめんな、先々週のアイスランドのときは首席合格だったのにな。
開始から約1時間、最終オーデションでイヤホンを落としたところで思い出した。
待てよ、砂漠の夜はめちゃくちゃ冷えるって聞いたことあるぞ。
(このとき頭が働いて本当によかった。)
ユニクロのダウンジャケットが敗者復活から奇跡の逆転合格を果たしたところで、モロッコへ連れて行く全装備が出揃う。

旅慣れた人間ほど荷物は軽く、バックパックは小さくなるとよく言われるけど、オレの荷物はいつも空港職員が顔をしかめる重さだし、
バスに持ち込もうとすると必ずトランクへ入れるよう言われる大きさだ。
より大きなバックパックを欲しいと思うことは多々あれど、小ぶりなそれを購入する予定は悲しいかな全くない。

フライトは21日の朝9時半、色々考えた結果空港で1泊するのが最善ってことで、前日20日の夕方に家を出た。
旧正月のお祝いで賑わうチャイナタウンの端で友達と待ち合わせ、激安日本食レストランで当分有り付けないであろう豚カツ食って
(モロッコは国民のほとんどがムスリムなため、豚肉が手に入らない)バスで郊外のガトウィック空港へ。
24時間オープンのカフェのソファーは先客で埋まっていたけど、なんとか(背もたれを挟んだ反対側でおっさんが地響きのようなイビキをかいて寝ていることに目を瞑れば)良さげなソファーを確保し非常に浅い眠りについた。

 

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一泊したソファーとHexのバックパック(カメラバック)。写真左端に注目してほしい。おっさんの足である。

 

【2月21日】

昨年11月に購入したロンドンとモロッコ中央の都市マラケシュを結ぶ往復航空券は約1万円程だった。
交通機関の運賃は移動距離や時間や快適さをそのまま反映したものではないし、ましてや国が変われば物価も何も違うなんてことは十分承知の上だけど、とはいっても地元の那須塩原から東京まで新幹線往復が1万円ちょっとでしょ。そう考えたらなかなかいい買い物なんじゃねえか。なんて邪推をしながら飛行機に乗り込む。

フライト時間は約3時間半、一眠りしたあと地球の歩き方を読んでいると、隣り合わせたおばちゃんがチラチラこちらを見ていることに気づいた。彼女はモロッコの首都ラバト在住でビジネスで時々イギリスに来てるらしい。日本語のガイドブックが珍しかったようだ。色々教えてくれてありがと!助かったよ!
定刻通り13時にメナラ空港に到着。今までに利用したどの空港より清潔でゴージャスで、アフリカにも近代化の波が到来していることがひしひしと感じられた。とはいえやっぱりここはアフリカ、入国審査の長蛇の列はいくら待てども動かないし、空港職員はすげー無愛想。建物は変わってもそこで働く人や文化は、突然変わらない。

空港で1万円分だけ両替を済ませ、まずは荷物を置きに宿へ。
モロッコの都市は7世紀にアラブ人の侵入によって作られた「メディナ」と呼ばれる旧市街と、
19世紀にフランスの支配下で発展した新市街に分かれており、今夜の宿はどうやら旧市街の中にあるらしい。
外敵の侵入に備えあえて複雑に作られた旧市街の路地は「よそ者は必ず迷う」と言われているが、それをいいことに、何人もの怪しげな男が声を掛けてくる。

 

「どこに行きたいの?チャイニーズ?コリアン?ジャパニーズ?」
「お前が行こうとしてる道は行き止まりだ、俺についてこい」
「その先工事中で進めないから俺が他の道案内してやるよ」

 

オフラインでも使えるGPSの地図アプリ(Maps.me、おすすめです)を使ってたから俺は奴らの嘘に気づけたんだけど、周りを見渡すと親切な助言だとバカ正直に受け取ってしまった旅行者たちが見返りの金銭を要求されてる。なるほどなあ。いつかこうして日銭を稼ぐ奴らも、そんなことする必要がないくらい、豊かな世界になるといいなあ。

懲りずに騙そうとしてくる男たちを適当にあしらって宿の前までたどり着くと、そこでは子供達が無邪気にサッカーに興じていた。その光景はどことなく懐かしく、異国情緒を感じさせるもので、ああここへ来てよかった。と心から思った。

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チェックインを済ませ、バッグをホステルに置いて歩いてフナ広場へ向かう。
道すがらモロッコ最大手の通信会社モロッコテレコムの販売員からSIMカードを購入。
モロッコの通貨はデュラハム(DH)で、1DHが11〜12円。1ギガと1時間の無料通話がついて40DHで合意。後に分かったのだがこれは非常に安い。
購入したSIMをアクティベートさえしてしまえば、皆さんが日本で使っているのと同じようにスマートフォンを使えるようになる。便利な時代だなあ。
これを好ましい時代の変化と捉えるか悪しきものと捉えるかは人それぞれだけど。
正式名ジャマエルフナ、通称フナ広場は11世紀後半、マラケッシュがかつて首都であった頃からこの街の、そして西アフリカ最大の交易場となっていた広場で、それ自体が世界無形文化遺産にも登録されている。近づくにつれて人が増えてなかなか前に進めなかったんだけど、広場に着くと視界は一気に開けた。
おいおいおいおい、マジか。こりゃすげえ。大道芸人や蛇使い、飲食店の屋台、ガラクタ売りなどがところ狭しと軒を並べ、混然とした賑わいを見せる。
俺の今の写真技術や文章力では感じた匂いや音、活気とエネルギーを伝えられないのが本当に悔しいんだけど、そこには確かに尋常じゃないエネルギーが渦巻いてて、世界にはきっと沢山こんな場所があるんだろうな、一つのところに留まってたら勿体ねえな。もっともっと旅をしようと思ったことを覚えている。

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民族衣装

新しい景色と文化とスパイスの匂いに興奮して入り組んだ露店を見て回ったが、(幸い?)あまり欲しいものもなく、屋台でタジン鍋を食べて帰った。

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ケバブ屋のオヤジ。

いくらアフリカといえども季節は2月、夜は普通に冷える。ホステルに戻って、サハラ砂漠から帰ってきた同部屋のフランス人から色々役に立つ情報を教えてもらい、
ああいい日だったな、あとはシャワー浴びて寝るだけだと考えていたが、アフリカはそんなに甘くなかった。

シャワーのお湯が出ねえ。

ヒーターの問題かなと楽観的に考えて3分程待ってみたが少し茶色がかった水がチョロチョロと出てくるだけだった。
歯はカチカチと音を鳴らし、肌は粟立っていたが、日本やイギリスでは到底できないような経験に、心は喜びの声をあげていた。